イベント

第9回 アシンメトリ量子セミナー 松平 和之(九工大)
@大阪大学

終了
2024/ 10/ 29

日時: 2024年10月29日(火)15:10~16:30
場所: 大阪大学大学院基礎工学研究科(Zoom配信:阪大基礎工の固体物理セミナーと共催)

講師:  松平 和之 教授(九州工業大学大学院工学研究院)

講演題目:  イリジウム酸化物Ca5Ir3O12における電気トロイダル秩序と新奇磁気秩序

概要

 物質が示す相転移において秩序変数を解明にすることは固体物理学における主要な研究テーマの 1 つであり,新しいタイプの秩序状態の発見は新しい物理や新機能の発見へとつながる。 近年,電気トロイダル秩序が,新しい機能性を伴う秩序相の微視的起源となることから研究が盛んに行われている。電気トロイダル秩序は,空間反転対称性が保たれ,その回転軸を含む鏡映面の鏡映対称性の破れにより生じており,その実証例が未だ少ない稀有な秩序状態である[1,2]。
 5d遷移金属イリジウム酸化物 Ca5Ir3O12 は 105 K と 7.8 K でそれぞれ二次相転移を示す[3,4]。最近,我々のグループでは 105 K での相転移の秩序変数が電気トロイダル双極子であることを明らかにしてきた[5-10]。 一方, 7.8 K の相転移は磁気秩序であるが[3,4],当初, 予測されていた単純な反強磁性秩序では説明できず,磁気八極子秩序の可能性が高いことが明らかになってきた [11,12]。
 本セミナーでは 105 K 相転移の秩序変数の解明に至るまでの研究と磁気秩序相の研究の現状について紹介する。

[1] 楠瀬博明,「スピンと軌道の電子論」講談社 (2019).
[2] S. Hayami and H. Kusunose, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 072001 (2024).
[3] M. Wakeshima et al., Solid State Commun. 125, 311 (2003).
[4] K. Matsuhira et al., J. Phys. Soc. Jpn. 87, 013703 (2018).
[5] T. Hasegawa et al., J. Phys. Soc. Jpn. 89, 054602 (2020).
[6] S. Tsutsui et al., J. Phys. Soc. Jpn. 90, 083701 (2021).
[7] H. Hanate et al., J. Phys. Soc. Jpn. 89, 053601 (2020).
[8] H. Hanate et al., J. Phys. Soc. Jpn. 90, 063702 (2021).
[9] H. Hanate et al., J. Phys. Soc. Jpn. 92, 063601 (2023).
[10] 花手洋樹, 松平和之, 日本物理学会誌 78, No.10, 599 (2023).
[11] H. Hanate et al., J. Magn. Magn. Mater. 564, 170072 (2022).
[12] S. Hayami et al., J. Phys. Soc. Jpn. 92, 033702 (2023).

問合先:石渡 晋太郎
E-mail: ishiwata.shintaro.es@osaka-u.ac.jp