イベント

【アウトリーチ】 「物質探査と超伝導が拓く未来」C01大原繁男
@愛知県立一宮高等学校

終了
2023/ 11/ 16


題目:物質探査と超伝導が拓く未来
日時:2023年11月16日(木)
             2・3限( 9:55~12:15)4、5組
             4・5限(12:55~15:15)1、2、3組
場所:愛知県立一宮高等学校 桃陵館
対象:3年生理系クラス(1〜5組、200名弱)

 アウトリーチ活動として、愛知県立一宮高校で「物質探査と超伝導が拓く未来」の講演を行いました。理系の3年生200名弱を2クラスに分けて、同じ内容を午前と午後で講演しています。

 前半は、学術変革領域研究とも関係づけて、物質とはなにか、温度とはなにか、を高校生に考えてもらいます。議論しながら、物質を探査すること、低温で実験すること、相転移などについて理解を深めていきます。新物質が新しい物理や機能を生み出すこと、材料となった場合には社会を変革すること、人類を幸福にするかどうかは使い方にあることも示していきます。新物質を探査する理由として生徒から「自己満足」という意見がありました。これに対しては、研究を進める原動力となる情熱や好奇心という意味ではそれも大事、でも何らかの客観的研究価値がなくてはならない、という説明で対応しました。

 後半は、新しく得た知識や理解を使いながら、液化窒素を使った実験を行います。酸素の液化と高温超伝導体(YBCO)を用いた浮き磁石の実験を通して、相転移を肌で感じてもらいます。酸素の液化では、液体(固体)がどのくらいの原子が集まってできているのかも理解させます。色の観察やネオジム磁石に対しての反応への高校生の驚きには、いつも嬉しくなります。浮き磁石の実験は、やや遊ぶ感じになりますが、「うわっ」「すげー」という声が上がり、スマホで動画を撮りはじめたりするようすを見ると、まずはこの感動で十分だよね、と思ってこちらも笑顔になってしまいます。

 実験後に、カマリング・オネスによる水銀の電気抵抗率の測定、永久電流の観測[1]を紹介し、なぜ水銀が選ばれたか、ゼロをどうやって証明するか、などの説明をします。完全反磁性は簡単な紹介にとどめています。

 生徒たちは、銅細線とYBCOの抵抗率の温度変化の実験を事前に行い、レポートを提出しています。事前に20部程度のレポートを読ませていただいて、講義では記録や計算の誤りを指摘し、よい考察があれば紹介しています。今回は、熱電対への興味や、抵抗がこんなに温度で変わるなら、夏と冬で製品の消費電力に差が出るのだろうかという疑問を示した生徒もありました。高校生の興味が広がっていることがわかります。四端子法に言及しているレポートもあったので、微細加工試料の写真を見せて、基本的な測定方法であることも紹介しました。

 実験の評価が「よい」「よくない」にとどまっている場合には、何が、どのように、なぜ、といったことが欠落していることを指摘して、不足を補い、過剰を排除して、わかりやすい文を簡潔に書くことを勧めました。

 授業の終わりに、いくつか質問をうけました。永久電流の寿命の求め方や電子雲を表現した点の意味など説明不足だったところに関して質問に応じる形で補いました。

[1] Dirk van Delft and Peter Kes, Physic. Today 63, 9, 38 (2010).