【アウトリーチ】「日本語からはじめよう」
題目:物質探査と超伝導が拓く未来
講師:大原繁男 名古屋工業大学 教授 / 計画研究C01代表
日時:2026年10月22日(木)
2・3限( 9:55~12:15)1,2,5組
4・5限(12:55~15:15)3,4組
場所:愛知県立一宮高等学校 桃陵館
対象:3年生理系物理選択クラス(1〜5組、約180名)
概要:愛知県立一宮高校で「物質探査と超伝導が拓く未来」と題したアウトリーチ活動を行いました。20年以上続けている実験と講演になります。
一宮高校は2003年から6期連続で文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に選ばれています。SSHは7期目は制度がありませんから最後の期間となります。6期目は「チェンジメーカーの育成」をテーマに今年度から3年間です。運営指導委員として1期目以前から参画させていただいたこともあり、私にとっても嬉しい6期目の採択となります。今期も微力ながら高校生への理科教育に貢献したいと思います。
講演冒頭では、自己紹介として、私自身が担っている役割を専門性から広汎性まで少し時間をかけて話しました。これは最近始めたことなのですが、人と出会うことが大事であると考えてのことです。研究や大学での役割、ヘリウムリサイクルとの関わり、物理学会の理事としての役割、高校や愛知県との関わり、出張授業や市民講座、家庭での私などを少し詳しく話しています。写真1は昨年担当した山梨での市民講座を紹介しているところです。
伝えたいことは「あなたは何者ですか?」と尋ねられたとして、さまざまな返事ができると人生が豊かであること、多くの立ち位置があることが人生を楽にもするということ、自分のやりたいことやるべきことを一歩一歩やっていくことの大切さです。一歩だけでいいから踏み出そうね、と最近いろいろな講演で話しています。
続いて「なぜ新物質を探査するのか」「1立方センチメートルの固体に大体いくつの原子が含まれているか」「温度とはなにか」を問いかけて考えていきます。自己紹介で登場する新物質の発見やヘリウムの話が伏線となっています。
考えたことを発表してもらう際には、近くの人と話し合ってから手を上げてもらっています。いきなり発表を求めても手は上がらないのですが、相談してからにするとどの高校でも手があがります。おすすめのやり方です。出た意見を板書しながら対話します。
ここまでを前提に「酸素の液化」と「超伝導の完全反磁性」の実験を行います。酸素をゴム風船につめて試験管に繋ぎ、液体窒素に浸して液化しますが「1立方センチメートルの固体に大体いくつの原子が含まれているか」の推定と実験を結びつけてもらいます。酸素の色やネオジム磁石との反応も観察します。凝縮したことで見えるようになった性質です。続いて、銅酸化物超伝導体の上で小さなネオジム磁石が浮く不思議を見てもらいます。写真2は実験のようすです。
20年以上変わらずに、これらの実験では生徒たちから「おー」という声が聞くことができます。人生で最初で最後の体験になる場合もあるでしょうから楽しんでもらうのがなによりと思っています。
最後に超伝導体発見の歴史を紹介しながら、ゼロは測れないことや完全反磁性について、温度と実用化の関係、研究不正に触れていきます。講義の締めには次のパスツールの言葉を4つ紹介しています。3番目はノーベル化学賞を受賞した北川進先生も紹介されています。
1)偉大な人々は目標を持ち、そうでない人々は願望を持つ。
2)目標を達成できた秘訣は、絶対にあきらめないこと。
3)準備を怠るものには、チャンスは決して訪れない。
4)科学と平和が、無知と戦争に勝利することを、私は確信している。
実験内容は20年以上変わっていませんが、講義する事柄や実験の進め方などは改善し続けています。今年も話し合いながら考えていった問いかけ部分が講師としても面白かったです。

